「明治天皇と日露大戦争」を撮影見学された遺家族の声

水温む桃の節句の3月3日、新東宝撮影所には、時ならぬ「日露戦争内閣」現代版が出現した。

「明治天皇と日露大戦争」を撮影見学された遺家族

即ち、当時の閣僚、重臣、将星の遺家族70余人が「明治天皇と日露大戦争」の撮影見学に参集されたのである。賀陽恒憲氏、鷹司信輔氏をはじめ首唱・桂太郎の令孫桂広太郎氏、元老・伊藤博文の令息伊藤真一氏、元老・山県有朋の令孫・山県有光、山県むち子夫人、元老・井上馨の令孫井上三郎氏、外相・小村寿太郎の令息・小村捷治氏、軍令部長・伊東祐亨の令息伊東靖祐氏、蔵相・曽禰荒助の令息曽禰冬来氏、連合艦隊司令長官・東郷平八郎の令息東郷彪氏、など、折から第三ステージでセット撮影を続けている「宮中、二の間・御前会議」のシーンに感慨深げに瞳を走らせ、ラッシュの上映を見た後、こもごもに感想を語られた。

伊藤真一氏(元老・伊藤博文・令息)
「明治天皇や私の父(博文)が映っている古いフィルムを所持しているが、先づ、これを御覧にいれたかった。本日、拝見したところ、宮中のセットも非常に立派で感服したが、私は、更に詳しいことを知っているので、色々ご意見を申し上げたかった。この場面、御前会議のテーブルクロスは且って、私が所有し、後に博物館に寄附したものだが、今日は、それが最も目について感慨もひとしおだ。父を演ずる阿部九州男さんも非常によく似ているが、父に比べて、やや大きい。私は父の日常をいろいろ知っている。例えば、葉巻を口から離したことがなかったのだが、そんな事についても、フィルムをお見せして参考にして頂ければよかったと思う。併し、何よりも、立派な映画が出来ることを心から期待しています。」
伊東靖祐氏(軍令部長伊東祐亨・・・令息)
「非常に感激しました。私自身、日清戦争から日露戦争まで、10年間の臥薪嘗胆した日本人の苦労を知っておりますので、その厳しい感じが画面によく滲み出ていて、思わず涙をもよおしました。出演の俳優さんは非常に好演で、この映画の完成を心から期待しております。尚、山本海相の御遺族もおいでになるというお話ですが、今回、お会い出来なかったのは残念です。」
長岡護一氏(少将長岡外史・令息)
「本日の見学で、撮影現場の苦労は大変なものであると判った。このセットを見て、まことに感激にたえずただ有難さで涙がこぼれる思いでした。」
桂広太郎氏(首相桂太郎・令孫)
「大変な仕事だと思って、ただ目をみはりました。感無量で何も云えません。祖父の面影が、演ずる俳優さんに感じとられて、感銘深く思いました。」
曾禰冬来氏(蔵相曾禰荒助・令息)
「映画の撮影現場は、はじめて見ましたが、実に興味深く拝見しました。私の父を演じられた俳優さんも居られたようですが、あの当時、父はもう少し白髪が多かったように思われます。このような作品が企画されることは、大変によろこばしい事と思います。」
井上三郎氏(元老伊能馨・令孫)
「撮影現場に入ってみて驚きました。私がかねて聞いていた御前会議の模様を目のあたりに見たような気がして感にたえません。私がこうあるべきだと思うことがあっても、映画はやはり大衆のものですから、それ自体の作り方、考え方があると思います。とに角、大変立派なものですし、大いに期待しています。」
小村捷治氏(外相小村寿太郎・令息)
「始めから理想的には行かないものでしょうが、こういった企画を何回も何回もくり返してゆけば、日本人の真の姿を表現することで、国家のために非常に有益な事業であると思います。俳優さんの中では、特に山県さんがよく似ているように思いました。」
伊集院武雄氏(伊集院五郎・親族)
「当時の事を思い出しまして、大変、涙が出る程に感激しました。よい立派な映画が出来上がであろうことを、期待しております。」
山県有光氏(元老山県有朋・令孫)
「映画になると聞いたので、実は、その娯楽的な扱いについて、少々懸念したが、実際の撮影を見て、監督・俳優・その他各位が、文字通り、真剣に仕事に取組んでいられるのを見て、全く感心した。私の予想外の画期的な映画が出来るものと確信を持った。一番驚いたのは、偶然の一致か、又高田稔君が、特別に似せたのか、祖父と全く同じ風貌であったことである。完成されたら、一日も早く見せて頂きたいと思う。」

(パンフレットより抜粋)

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